第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
「……一応言っとくけど、じじいにはもうバレてんぞ」
「え……、怒られ、た……?」
「まぁな」
何でもないことみたいに、ラビは笑う。
「……でも、もう離してやれねぇ」
……。
簡単なことじゃ、なかったはずなのに。
選んでくれた。
……だったら、私も、ちゃんと伝えたい。
「私は、ラビがブックマンの道を選んでも好きよ」
髪を梳いていたラビの指が、止まった。
「だから……一人で、全部背負わないで」
ラビの口元が、きつく結ばれた。
隠すように、その頭がゆっくりと私の左肩に落ちてくる。背中に回された腕に、力がこもった。
「もう……戻れねぇさ」
肩口で、くぐもった声がした。
「けど……それでいいって、思っちまってる」
「……ラビ」
顔を上げたラビの翠の瞳が、柔らかく緩んだ。
「今、その声で名前呼ばれんの、かなり危ねぇ」
悪戯っぽく、わざとゆっくり呼んでみる。
「ラ、ビ」
「……お前な」
観念したみたいに笑うラビと、額を合わせて笑い合う。
「ティファ……。もう少しだけ、このまま」
小さく頷いて、彼の胸に頬を寄せる。
抱き締める腕が強くなっても、少しも苦しくない。
月明かりの差すチャペルで、私達はしばらく、言葉もなく寄り添っていた。