第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
ぐちゃり、と。
目の前で、巨大な花がゆっくりと口を開けた。鋭い牙の奥から、生臭い息が吹き付けてくる。
「……やば」
ラビが呟いた。
レイピアを握ろうとしても、締め上げられた腕に力が入らない。隣で、アレンが左腕に力を込める。蔓がぎしりと軋むだけで、びくともしなかった。
「――あ」
アレンが、何かを思い出したように目を見開いた。
「そうだ……! 最初に襲われた時、どこかで見たことがあると思ったんです!」
「いや説明は後!!」
「師匠と旅していた頃、僕、これと同じ花を世話したことがあります!!」
「……マジで!?」
「……あ。師匠の、あの鉢植え……」
「ティファも知ってたんかよ!?」
「……忘れてたのよ」
「この花、好意を持った相手には噛み付かないんです! だから、愛情を伝えてください!!」
「いやいやいや!!」
ラビが、目の前の巨大な花を見る。花も、ラビを見た。
「こんなバケモン相手に!?」
「ちゃんと伝えれば大丈夫です!!」
ラビは一瞬黙り込んでから、急に覚悟を決めた顔になった。
「……分かった! やるしかねぇさ!!」
花へ向き直る。