第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
「やっべぇさ!!」
ラビが顔色を変えた。
「クロちゃん、オレとさっきバトってヘロヘロなんさ! 助けねぇと――」
ドォン!!
石床が、轟音とともに爆ぜた。
崩れた壁際からも、割れた床の隙間からも、巨大な花が次々と飛び出してくる。牙を剥いた花弁と蛇のような蔓が、一斉に私達へ襲い掛かった。
「ティファ!!」
アレンに腕を引かれた直後、さっきまで私のいた床を、巨大な花弁が噛み砕いた。
「どんどん出てきます!」
「ちくしょー!! 何なんだお前ら!!」
ラビが鉄槌を振り回しながら、盛大に舌打ちする。
湧き出す花が壁になって、行く手を塞いでいく。その向こうで、エリアーデの爪が閃き、クロウリーの身体がまた床へ叩き付けられるのが見えた。
「クロちゃんとこ行けねぇぇぇ!!」
完全に、分断されていた。
迫る蔓をレイピアで斬り払う。肩の傷から血が溢れるたびに、右腕から力が抜けていった。囚われた魂の悲鳴と、花の殺意が、一度に押し寄せてくる。
視界が揺れた。
「ティファ、下がって!」
アレンの声と同時に、巨大な花弁が目の前に迫る。咄嗟にレイピアを突き出した瞬間、右肩に激痛が走った。
「ぁっ……!」
動きが鈍る。横から振り抜かれたラビの鉄槌が、花を叩き潰した。粘ついた液体が、床に飛び散る。
「その肩で前に出んな!」
荒い息のまま叫ぶラビの横顔にも、余裕はなかった。
「アレン!! 左だ!」
「分かってます!!」
白銀の光が蔓をまとめて吹き飛ばす。その背後から、また新しい花が床を破って現れた。
蔓の向こうで何が起きているのか、確かめる余裕すらない。今はただ、生き残るだけで精一杯だった。