第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
side:ラビ
眠気は、なかなか来なかった。
ラビは敷布団へ横になったまま、ぼんやりと天井を見上げている。
暖房の音。
窓を打つ雨。
時折、廊下の向こうから聞こえる足音。
病院の夜は静かだった。
けれど、目を閉じるたび、脳裏へ蘇る。
歪んだ遊園地。
触手へ絡め取られ、宙へ持ち上げられたティファ。
白銀の髪が乱れ、右腕から血が散った瞬間。
あの時、自分の中で何かが音を立てて切れた。
どんな死も、痛みも、感情で歪めずに見届け、記す。
それがブックマンだと、ずっと教えられてきた。
それなのに。
記録も。
掟も。
立場も。
ティファの腕が裂けた瞬間、何ひとつ残らなかった。
ただ、奪われると思った。
あの声も。
銀色の髪も。
自分の名前を呼ぶ存在も。
二度と戻らない場所へ連れていかれると思った。
その瞬間、世界ごと焼き潰してでも取り返したいと思った。