第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
教団本部――室長室。
重厚な扉を開けると、書類の山に埋もれていたコムイさんが顔を上げた。窓から差し込む夕暮れの光が、室内を柔らかな橙色に染めている。
「来たね、三人とも」
横を見ると、アレンはまっすぐコムイさんの方を向いたままだった。
……書庫を出てから、なんだか、目が合わない。
「今回の任務だけど――」
コムイさんが、机の上に一枚の資料を広げる。そこに描かれた顔を見た途端、思わず眉が寄った。
――クロス・マリアン。
私とアレンの師匠だ。
「クロス元帥の痕跡が見つかった。最後の目撃情報は東欧方面。ファインダーに追わせているけど、途中で足取りが完全に消えている」
アレンが、深く溜め息を吐いた。
「……普段は足取りひとつ掴ませない人なのに。嫌な予感しかしません」
「連絡も、ほとんど寄越さないものね」
「たまに来たと思ったら、酒代のツケを押し付ける手紙ですからね……」
遠い目をするアレンの横で、ラビが吹き出した。
「手紙までツケかよ。噂以上だな、クロス元帥」
「笑い事じゃありません」
呆れた顔をしながらも、アレンの目は、資料の似顔絵から離れなかった。
師匠がわざわざ痕跡を残す時は、たいてい、ろくでもないことが起きている。