第15章 【第十四話】言いかけた熱
「……オレは、お前が――」
回廊の奥から、数人分の足音が近付いてきた。
「リーバー班長、こっちの数値も確認お願いします」
「ああ。あとで見る。先にラビを捕まえる」
角を曲がって現れたのは、書類の束を抱えたリーバー班長だった。後ろには、タップと数人の科学班員の姿もある。
リーバー班長は私達を見つけるなり、足を止めた。
「……いた」
ラビの顔が、露骨に引き攣った。
「……げ」
「"げ"じゃない。医務室から連絡が来てる。治療の途中で抜け出したエクソシストがいるってな」
リーバー班長の視線が、ラビの右手へ落ちる。
「火傷だけなら医療班で済むが、イノセンス側に負荷が出てる可能性がある。科学班へ来い。確認だけは受けろ」
「……今かよ」
「今だ」
ラビは舌打ちして、観念したように息を吐いた。
歩き出す前に、一度だけ私を見る。
さっきの言葉の続きを、そこへ置いていくみたいに。
赤い髪が、薄暗い回廊の角に消える。
――オレは、お前が。
途中で途切れた言葉だけが、胸に残っていた。
続きは、聞けなかった。
聞いてしまえば、きっと。私たちはもう、今までと同じではいられない。