第15章 【第十四話】言いかけた熱
朝食を終える頃には、外の雨もすっかり上がっていた。
窓の向こうでは、雲間から淡い朝日が差し込み始めている。昨夜までの冷たい雨が、嘘みたいだった。
「少年のことは、この病院で引き続き経過を見てもらう手筈です」
トーマスが、疲れの滲む顔で頭を下げる。
「容態に変化があれば、僕からすぐ教団へ連絡を入れますので」
私は頷いた。隣で、ラビも短く礼を返す。
「悪ぃな」
病院側との引き継ぎは、すぐに終わった。
問題は――そのあとだった。
「……」
「……」
準備を終え、ロビーの長椅子の前に立ったまま、私達はなぜか揃って黙り込んでいた。
気まずい、というのとは少し違う。距離の測り方が、分からなくなっていた。
繋がれた手の熱も。
眠る直前、すぐ下から聞こえた声も。
全部がまだ、身体の奥に残っている。
「……右腕、大丈夫か?」
先に口を開いたのは、ラビだった。
「え? あ、うん。平気よ」
答えながら、なぜか視線がうまく噛み合わない。
いつもなら軽口のひとつでも叩いてくるはずの彼が、今日は妙に静かだった。
私は落ち着かなさを誤魔化すように、三角巾の結び目を意味もなく弄る。
ラビはラビで、包帯の巻かれた右手を、所在なさげに握ったり開いたりしていた。