第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
雨に濡れた遊園地を後にした頃には、空はすっかり夜へ沈みかけていた。
崩れた門を抜け、ぬかるんだ道を進む足音だけが、静かな廃墟に長く響く。
少し離れた場所で、トーマスが本部へ緊急連絡を送り続けていた。
「……こちら現地調査班。確認されたAKUMA反応、消失。生存者一名を保護。エクソシスト二名負傷。繰り返します、生存者一名を保護――」
私はその声をぼんやり聞きながら、右腕の痛みを押し殺して歩いていた。
もう、まともには動かせない。
裂かれた傷口へ巻いた応急処置の布は、とっくに血を吸い切っている。冷えた空気が触れるたび、腕の内側から鈍い痛みが脈打った。
それでも、少し前を歩くラビの方が、ずっと危うく見えた。
「……ラビ」
返事はない。
彼は振り返らないまま、無言で周囲へ視線を走らせていた。肩で息をしている。
団服の隙間から覗く首筋や腕には、うっすらと赤い火傷の痕が浮かんでいた。
それなのに彼は、一度も足を止めず、痛いとも言わなかった。
「近くに、教団の協力病院があります」
少年を背負ったトーマスが、息を切らしながら振り返る。まだ顔色は青いのに、声だけは必死に整えていた。
「本部へ戻るより、そちらへ向かった方が早いです。まずは応急処置を受けてください」