第8章 【第七話】肩を並べる約束
けれど、その姿を見た瞬間。
あの夜の書庫が、ふと脳裏を過った。
古い時計の音。
手帳を挟んで交わした言葉。
そして、こちらを見ていた翠の瞳。
――そりゃ覚えてるさ。あんな顔で頷かれたらな。
あの時。
彼の目に浮かんでいたものが何だったのか、私はまだ分からない。
「……ラビが同行するの?」
「なんさ、その微妙な反応」
ラビが大袈裟に肩を落とす。
「普通、また一緒に任務へ行けるって分かったら、もう少し嬉しそうな顔してくれてもよくね?」
「驚いただけよ」
「本当かよ」
「本当だってば」
返すと、ラビは面白そうに目を細めた。
その笑顔を見ていると、先ほどまで胸へ沈んでいた冷たさが、ほんの少しだけ和らぐ。
けれど、それを認めるのは、何故か少し落ち着かなかった。
コムイさんが、軽く咳払いをする。
「今回、確認されているのは通常のAKUMA反応だ。前回の村で起きたような存在消失現象との関連は、今のところ確認されていない」
胸の奥で張り詰めていたものが、僅かに緩む。
けれど、コムイさんの表情は晴れなかった。
「ただし、中央庁から一つ指示が来ている」
私は顔を上げた。
「今後の任務でも、君が力を使った際には、その経過を記録するように、と」
喉の奥が、微かに熱を持つ。
「……前回の件が、理由ですか」
「うん」
コムイさんは静かに頷いた。
「君の歌が、歪められた魂にまで届いたことを、中央庁は見過ごしていない」