第52章 【第四十七話】欲しかった言葉
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日が傾き始めた頃、素振りの音が止み、足音がこちらへ近づいてきた。
顔を上げると、神田が目の前に木刀を差し出していた。何も言わず、ただ柄をこちらへ向けている。
「……今日は、もう」
軽い素振りなら許可は出ているけれど、今は何かを試す気力が残っていなかった。
神田は急かしもせず、ただ柄をこちらへ向けたまま待っていた。
私はしばらくその木刀を見つめてから、手を伸ばした。
受け取ると、思っていたよりも重かった。
神田は少し離れた場所へ戻り、木の幹に背を預けた。
息を吸い込み、木刀を一度振り下ろした。
もう一度振る。
身体は重く、軌道もぶれていた。それでも、柄の硬さは掌に伝わり、振り下ろした重みが腕の奥まで響いた。
呼んでも、形にならない力とは違う。
握れば、ちゃんとそこにある。
もう一度。
木刀が風を切る。
……ちゃんと、ある。
今、私の手の中に。
三度目を振り下ろしたところで、視界が滲んだ。
また涙が落ちた。
今度は、止めようとは思わなかった。
構え直し、四度目、五度目と木刀を振った。
いつの間にか、何度振ったのかも分からなくなっていた。
神田は何も言わず、ただそこにいた。