• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第50章 【第四十五話】『守る』というかたち



「喋るのと歌うのでは、喉への負担が全然違うの。声が出るようになってきたからって、治ったわけじゃないわ」


「……はい」

「無理に歌えば、また声が出なくなる可能性もあるし――最悪の場合、そのまま戻らなくなることだってあるわ。歌だけじゃないわよ。話す声も、ね」

思わず喉へ手をやる。


「まあ、今の経過なら必要以上に心配することはないわ」

婦長さんはいつもの調子で続ける。

「だからこそ、今はちゃんと治すこと。焦らない。分かった?」

「はい」

「よろしい」

満足そうに頷き、掛け布団の端を持ち上げる。

「それと、今夜は冷えるから肩まで掛けて寝なさい」


【子供じゃないのに】

「言われなくても出来る人には言わないわよ」

何も言い返せなかった。


隣で、ラビが小さく吹き出す。


「……何よ」

「いや、別に?」

婦長さんが呆れたように息を吐く。

「元気なのは結構だけど、ほどほどになさいね」

盆を取り上げた。


「じゃあ、私は次を回ってくるから」

婦長さんは病室を出ていった。


ぱたん、と扉が閉まる。


少しだけ静かになった。



私は、まだ熱の残る唇へ無意識に指を触れそうになって――途中で止めた。

横を見る。

ラビと目が合う。

――見られていた。


「……」

ラビの口元が、ゆっくり上がった。

「何さ?」


「……なんでもない」

今度は私が先に顔を逸らした。

/ 1235ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp