第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
その夜、消灯前に婦長さんが検温に来た。
「今日は、なんだか顔色がいいわね」
婦長さんは体温計を振りながら、私の顔を見る。
「……いいことでもあったのかしら?」
私は少し考えて、頷いた。
いい日だった。
謝れて。
受け止めてもらえて。
また歌ってほしいと言われた。
一人にはもう謝れないと知った日でもあった。
眠る前、天井を見ながら思う。
歌いたい。
声が戻ったら、今度こそ、自分の意思で。
震えさせるためではなく。
聴いた人が泣いてしまうような、そんな歌を。
考えているうちに、さっき胸に引っかかったもののことは、いつの間にか意識の外へ消えていた。