第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
「……じゃあ」
言葉を探してから、思い切ったように続ける。
「戻ったら、また聴かせてください」
心臓が大きく鳴った。
扉が開く。
「よー、ティファいるかっ……て……。……お邪魔だったか?」
ラビだった。
「いえ、私達はそろそろ失礼します」
ヨハンとパウルさんが揃って頭を下げる。
ラビは軽く手を上げて応じ、二人が出ていく扉を見送った。
「……なんか、いい顔してたな。あいつら」
私はメモ帳を膝に載せた。
ペンを走らせる。
伝えたいことが、たくさんあった。
【謝れた】
「そっか」
【一人は、今回の戦いで亡くなってしまったみたい】
ラビの動きが止まる。
「……ああ、そうだったな」
彼はもう知っていたのだと、その一言で分かった。記録を整理しているのだから、当然だった。
【でも、エヴァンさんもあの日、私が見送った一人だって言ってくれた】
ペンが速くなる。
うまく書けなくて、字が崩れた。
【声が戻ったら】
【また歌いたい】
書いた文字を、ラビへ向ける。
ラビはいつも、返事が早い。
軽口なら、なおさらだ。
それなのに、その時だけ、ほんの僅かに返事が遅れた。
「……そりゃ、ティファの歌だもんな。きっと、届いたさ」
いつもの声だった。いつもの笑い方だった。
私はそのまま笑い返した。
胸の奥に、小さな何かだけが引っかかった。