第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
ふと思い出した。
あの日、彼らの他にもう一人、ファインダーがいた。
私は二人を見る。
【もうひとりの方は】
書きかけの文字を見て、ヨハンの目が僅かに伏せられた。
「エヴァンですね……」
――エヴァン。
頭の中で、その名前を一度だけ繰り返す。
ヨハンが視線を落とした。
「……避難誘導の途中でした」
短い沈黙。
「最後まで、果敢に立ち向かったと聞いています」
メモ帳の上で、ペンが止まったまま動かなかった。
――その人には、もう、謝れない。
「ティファさん」
ヨハンの声が少しだけ近くなった。
顔を上げると、彼はさっきより一歩、前に出ている。
「エヴァンも……あの日、あなたが見送ってくれた仲間の一人です」
指が震え、ペンを取り落とした。
床に転がる音が、やけに大きく響く。
拾おうとした私より早く、パウルさんが身を屈めて拾い上げ、そっとメモ帳の上へ戻してくれた。
「……あの」
パウルさんは、少し言いにくそうに言った。
「声……戻るんですよね」
私はすぐには頷けなかった。
まだ分からない。
婦長さんにも、そう言われている。
彼は私の反応を見て、少しだけ目を伏せた。