第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
舞っていた花弁も床へ落ちる前に掻き消え、あとには、いつもと変わらない銀髪だけが残る。
脇腹から溢れた血が、白い上衣を染めていた。喉元では、ニルヴァーナの光が激しく明滅している。
支えていた何かが、そこで一気に切れた。
ティファの膝が崩れ、視界が白く霞む。
――今のは、何。
自分がやったはずなのに、何一つ分からなかった。
瓦礫の奥で、レベル4がゆっくりと起き上がる。
全身が焼け爛れ、白い装甲も大きく崩れていた。肩口の亀裂からは、白銀の光が脈打つように漏れ続けている。
それでも、赤い目だけは狂気じみた笑みを浮かべていた。
「もうおしまい?」
レベル4が、ティファへ腕を向ける。
白い砲口へ、圧縮された闇が集束していった。
ラビの顔色が変わる。
「ッ、やめ――!!」
「チ……ッ!」
神田が踏み込む。
――間に合わない。
それが分かるのに、ティファの身体は動かなかった。
闇が、砲口の奥で弾ける。
――ドォン!!
その瞬間。
白い人影が、上空から落ちてきた。
轟音と衝撃波が弾け、レベル4の砲撃が真正面から弾き飛ばされる。
「……ッ!?」
ラビが目を見開き、神田も目を細めた。
ティファの前に、一人の人影が立っている。
巨大な退魔ノ剣。
白いマント――神ノ道化。
「……アレン」
生きていた。
胸がほどけかけたのは、ほんの一瞬だった。
――様子がおかしい。
アレンは俯いたまま、ほとんど動かなかった。
銀白の髪は血で汚れ、呼吸も浅い。
意識を失いかけているように見えた。
それでも、戦おうとする意志だけは消えていなかった。
神ノ道化を纏った身体が、辛うじて立っている。
レベル4が、困惑した表情を浮かべる。
「……なんで」
「なんで、まだうごくの」
アレンは答えない。
ただ、俯いたまま退魔ノ剣を握り直した。