第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
瓦礫の奥で、赤い瞳がぎらりと光った。
白い影が砕けた壁を突き破って飛び出す。
「いたい、いたいッ!!」
怒りに歪んだ顔が、一直線にティファへ迫った。
――避けられない……っ。
爆煙の中で、こめかみの髪飾りが再び強く光る。
――キィン……。
澄んだ音が、空気を震わせた。
散りかけていた光がティファの背後へ集まり、一本の鋭い光槍へ収束した。
どう使えばいいのかも分からない。
それでもティファは残る力を込め、レイピアを真っ直ぐ突き出した。
その切っ先が示す先へ。
――ドガンッ!!
光槍が、レベル4の肩口を貫いた。
「ァァァァァッ!!」
白い身体が押し戻され、再び壁の奥へ叩き込まれる。貫かれた肩口から、装甲へ幾筋もの亀裂が走った。
細い割れ目の奥から、白銀の光が漏れ出している。
やがて光槍は細かな粒となり、空気へほどけていった。それでも、亀裂の奥に残った光だけは消えない。
――違う。
以前なら、砕ければそれで消えていた。
今の光は、レベル4の内側に何かを残している。
白い殻の奥で何かが身じろぐたび、誰かの鼓動のように脈打っている。
――……ここに、いる。
消え入りそうな声が、ティファの内側へ触れた。
瓦礫の奥で、レベル4の白い指が不自然に跳ねる。床を掴もうとした手が、身体の命令を拒むように、一度だけ開いた。
「……うるさい」
レベル4は亀裂の走る肩を押さえた。
「おまえは、ねてればいいんだ」
その声は、これまでの赤子のような響きとは、どこか違っていた。
神田の視線が、レベル4の指先からティファへ鋭く移った。
「……お前、今の」
――ゴホッ。
口元から赤が散り、ティファの身体が大きく揺れた。
「ティファ!!」
ラビの叫びが響く。
白銀の髪飾りは光を弱め、輪郭をほどくように消えていった。