第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
「なっ……」
ラビが目を見開く。
神田も、動きを止めていた。
二人の視線の先を追うより早く、ティファはこめかみへ微かな重みを感じた。両のこめかみから後頭部へ、髪に沿うように何かが留まっている。
視界の端で、重なり合う花弁のような白銀の光が揺れた。
――髪飾り……?
確かめようとしても、手を伸ばせない。
レベル4の笑みが、初めて止まった。
「……なに、それ」
赤子のような声だった。
ティファは答えられない。
何が起きているのか、自分にも分からなかった。
歌っていない。
声を振り絞ったわけでもない。
喉元の紋章が深く脈打ち、そこから漏れた光が、白い上衣の胸元を淡く照らしている。
――ゾワッ。
レベル4の表情が変わる。
嫌悪。
怯え。
これまで一度も見せなかった感情だった。
「……やだ。そのひかり、きらい」
ティファの周囲へ、数本の白銀の光槍が浮かび上がった。
以前の光槍とは違った。
光でできているはずなのに、輪郭が異様なほど鮮明だった。白銀の輝きが幾重にも凝縮され、中心には刃のような細い光が走っている。
その周囲を、百合の花弁に似た光がゆるやかに舞っていた。
やがて光槍は、彼女の背後へ整然と並んでいく。
ラビが息を呑むのが分かった。
白銀の光は、目を奪われるほど綺麗だった。
それなのに、触れることさえ躊躇うような神聖さがあった。
「……ティファ」
呼ばれた名前だけが、妙に耳へ残った。
確かめるような声だった。
神田は折れた刀を握ったまま、ティファを見据えていた。
ティファはレイピアを振り下ろした。
――ドォォォン!!
白銀の光槍が一斉に降り注ぎ、轟音とともに爆発が巻き起こった。
レベル4の身体が、初めて大きく吹き飛ばされた。
「――ッ!?」
崩れ落ちる瓦礫を突き破り、そのまま壁へ叩きつけられる。
「……いたい」