第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
ラビの身体が宙へ浮き、血飛沫が舞う。
「ラビ!!」
ティファの瞳が、大きく見開かれた。
瓦礫へ叩きつけられたラビの肩から胸元へ、じわりと赤が広がっていく。それでもラビは鉄槍を杖にし、身体を起こした。
その隙に神田が踏み込む。
――ギィン!!
刀がレベル4の攻撃を受け止める。
だが、そこが限界だった。刀身へ亀裂が走る。
「こわれた」
――バキィン!!
刀身が半ばから砕け、神田の目が見開かれた。
その喉元へ、レベル4の腕が伸びていく。
――だめ……っ!
ティファの呼吸が止まった。
嫌だ。
頭の中で、何かが軋む。
また。
また失うの?
ラビも。
神田も。
ふいに、記憶の底から雪と灰の匂いが蘇った。
――母を失った、あの日の匂い。
嫌だった。
もう、誰も失いたくない。
自分だって、ここで終わりたくない。
誰かを残して死ぬのも。
誰かに置いていかれるのも、もう嫌だった。
みんなで、生きて帰りたい。
――ドクン。
――ドクンッ。
ニルヴァーナの鼓動が、ティファ自身の心音へ重なった。
――ドンッ!!
ティファを中心に、銀白の光が円を描いて爆ぜた。
神田の喉元へ伸びていた白い腕が、真横へ弾き飛ばされる。
「……っ!?」
レベル4の身体が、たたらを踏んだ。
何が起きたのか、ティファ自身にも分からなかった。手を伸ばした覚えも、歌った覚えもない。
ただ、みんなで生きて帰りたいと願った。
それだけだった。
空気が鳴る。
――違う。
あの時の、自分が薄まっていくような感覚とは違う。
嫌な圧迫感はない。
それなのに、身体の奥では何かが激しく震えていた。
ティファの足元から溢れた白い光が、白百合の花弁のように音もなく宙を舞う。
血と硝煙の匂いに満ちた瓦礫の中で、そこだけが異様なほど静かだった。