第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
「……リナリーを、お願い」
コムイは何か言おうとしたが、結局、小さく頷く。
吹き抜けの遥か上――リナリーのいる場所で、白い光が膨れ上がった。
ティファが顔を上げる。
ヘブラスカの身体から伸びた幾本もの白い触腕が、リナリーを包み込むように広がっていた。その中心でイノセンスが淡く光り、リナリーへ近づいていく。
レベル4が、不意に顔を上げた。
「……そこでなにをしてるの?」
赤い瞳が、ヘブラスカの触腕に包まれたリナリーを捉える。
次の瞬間、その姿が消えた。
「――リナリー!」
コムイの叫びが響く。
――ドォン!!
凄まじい衝撃がヘブラスカを襲った。
巨大な触腕が弾かれ、イノセンスが零れ落ちる。リナリーの身体も、床へ投げ出された。
「……っ!」
ティファは考えるより先に駆け出していた。
脇腹へ激痛が走る。
それでも構わず床を蹴り、レベル4へ向けて光槍を放つ。
――ガギン!!
放たれた光槍を、レベル4は白い腕で容易く弾き飛ばした。
光は砕け、粒となって散る。
レベル4の赤い瞳が、ティファへ向いた。
――こっちを見てっ……!
ティファはもう一度レイピアを構えた。
その横へ、鉄槍を手にしたラビが並ぶ。
「よそ見してんじゃねぇ! ――お前の相手は、こっちさ!」
「……クスクス」
レベル4の口元が吊り上がる。
「そうだったねぇ」
白い身体が、ゆっくりとこちらへ向き直った。
その隙に、コムイが走り出す。
「リナリー!!」
一度も振り返らなかった。
「来るぞ!」
神田の鋭い声が飛ぶ。
レベル4の姿が消えた。
「っ!!」
――ドォン!!
轟音とともに、ラビの身体が吹き飛ばされた。
神田が即座に踏み込み、振り下ろされた白い腕を刀で受け止める。
――ギィン!!
刀身が、嫌な音を立てた。