第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
崩れた吹き抜けの上層。
赤い非常灯の向こうに、ヘブラスカとルベリエ、そしてリナリーの姿があった。
リナリーはルベリエに腕を掴まれたまま、震えながら立っている。
それでも、逃げずに。
コムイの呼吸が止まった。
言葉を失った横顔へ、ラビが低く告げる。
「……行ってやれよ、コムイ」
「アイツは、お前のために生きてる。そばにいてやれよ……兄貴だろ」
コムイの肩が、小さく震える。
「……僕は」
苦しそうに目を伏せた。
「どうしてやればいいのか、分からないんだよ……」
弱々しい声が途切れた直後。
――ドゴッ!!
鈍い音とともに、コムイの身体が前へつんのめった。
「っ!?」
神田が、無表情のまま蹴り上げた足を下ろしている。
「何を今更……言ってやがる」
コムイが呆然と振り返ると、神田は鋭い目で睨み返した。
「テメェ、何のために教団入ったんだよ」
コムイの目が揺れた。
――クスクスクスクス。
子供のような笑い声が響き、全員の表情が変わった。
瓦礫の向こうから、レベル4が楽しそうにこちらを見下ろしている。
ラビは素早く周囲へ目を走らせた。
ファインダーだった灰の傍に、一本の鉄槍が転がっている。
ラビはそこへ駆け寄って拾い上げ、柄を握り直した。
「……悪ぃ。借りるさ」
イノセンスではない。
レベル4を倒せなくても、素手で立つよりはましだった。
ラビが鉄槍を構え、神田も刀を握り直す。
ティファも二本のレイピアを持ち上げた。
呼吸は、すでに限界へ近づいている。
それでも三人は、コムイを行かせるため、揃って前へ出た。
「さっさと行け」
神田が吐き捨てる。
ラビもレベル4から視線を逸らさないまま言った。
「ここはオレらで止める」
コムイの瞳が揺れる。
ティファは帯の下で疼く熱に耐えながら、小さく息を吐いた。