第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
Side:ティファ
――崩落区域。
砕けた鉄骨の間で火花が散り、赤い警報灯が崩れた昇降機の残骸を照らしていた。
その中で、コムイが苦しそうに咳き込んでいる。
「っ……げほ……!」
ティファは瓦礫へ手をつき、荒い呼吸を繰り返した。
脇腹は立っているだけでも痛み、視界が絶えず揺れている。
その横では、血に濡れた肩をすでに再生させた神田が、刀を握ったまま上層を睨んでいた。
瓦礫を蹴る音が近づいてくる。
「――無事か!!」
聞き慣れた声に、ティファの肩が小さく跳ねた。
弾かれたように顔を上げる。
――ラビ……っ。
壊滅した研究室で応戦していた、二名のエクソシスト。
気付けば、ずっとその中に彼の姿を探していた。
――無事だった。
目の奥が、一瞬だけ熱くなった。
けれど、泣いている場合じゃない。強く瞬いて、滲みかけた視界を戻す。
息を切らして駆け寄ってきたラビは、血に濡れ、立っているのもやっとのティファを見るなり、その両肩を掴んだ。
掴んだ手が、震えていた。その視線が、赤く染まった帯の脇へ落ちた。
「お前っ、その傷……開いてんじゃねぇか!」
震えた声に、胸が詰まった。
ティファは、目を合わせられずに視線を落とす。
「……貴方が、戦ってるかもって……」
「……っ」
ラビの手から、力が抜けた。
何か言おうとして、その口が閉じる。
遠くで、瓦礫の崩れる音が響く。
ラビの視線が、音の方へ跳ねた。
「ちっ。……続きは後だ」
ティファの肩に置かれた手へ、一度だけ強い力がこもった。
――この人との約束を破って、ここにいる。
震えていた手の感触が、胸に残った。
コムイが驚いたようにラビを見た。
「……リナリーは?」
息の混じった声で尋ねる。
ラビはしばらく黙ったあと、ゆっくりと上を見上げた。
コムイも、つられるように顔を上げた。