第42章 【第三十七話】声なき再会
Side:ラビ
石の匂いがした。
「……っ」
瞼を押し上げる。
ぼやけた視界に、白い天井――いや、空だ。
石畳の上に、大の字で転がっていた。
(……オレ、落ちたはず……)
伯爵。
抜けた床。
闇。
そして――手放した、腕の中の温度。
「っ……!」
一気に記憶が戻り、ラビは跳ねるように身体を起こした。
隣で、チャオジーが呻きながら目を開ける。
「ラビ、さん……? オレら、確か……」
「ああ」
落ちた。
底のない闇に。
なのに、今、地面がある。
顔を上げた先で、ラビは息を呑んだ。
崩れたはずの塔が、そびえ立っていた。
砕けて消えたはずの街並みが、光の粒を集めながら、次々と形を取り戻していく。
消滅は、止まった。
それどころか――戻っていく。
「どうなってんすか、これ……!?」
チャオジーの声が裏返る。
ラビは、答える代わりに笑った。
「アレンだ」
確信だけがあった。
(……やりやがったな、アレン)
なら。
生きてるなら。
やることは、決まっている。
「チャオジー。腹から声、出せるか」
「……は?」
「アレンを釣るんさ」
ラビは大きく息を吸い込んだ。
方舟のどこに、どう声が届くのかなんて知らない。
でも、この舟は望みに応える舟だ。
なら、届け。