第10章 恋する乙女のための小夜曲
「え、いや、ぼ・・・ボクも今来たところで」
普段とは違うクラスメートの姿に戸惑ってしまい、返事が遅くなった。
「今日は、来てくれてありがとう。」
優子がにっこりと笑う。優子の顔をまじまじと見るのは、考えてみれば初めてだ。
いや、それを言ったら、以外の女の子の顔をこんなに間近でしかも一対一で見たことなどあっただろうか?
「どうしたの?高山くん」
優子が不思議そうにする。いかん、ちょっと呆けていた。
「あ、や、その・・・いつもと違って、なんというか、す・・・素敵だなって」
あれ?なんかボク、変なことを口走ってやしないか?妙なことを言って、張り手が飛んで来たらどうしよう。
優子が顔を真っ赤にしてうつむく。
肩掛けのバックをぎゅっと抱きしめるようにしてもじもじする。
いつものとの会話の癖で、思わず身を固くするが、全く違う反応が返ってきたことで、さらに動揺してしまう。
「あ、いや、ええと・・・変な意味じゃなくて・・・だから」
ああ・・・何してんだ、ボクは。
「と、とにかく、行かない?ここ、暑いし」
苦し紛れに言うと、優子は小さくうなずいた。
こうして、ボクと優子のデートが始まった。