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彼女はボクに発情しない

第9章 ボクと歌姫たちの三重奏


機械音声が笹本さんのホームランを告げ、彼女は小さくガッツポーズをする。
うそ・・・?!
結局最後まで笹本さんの快進撃は続き、20球中、外したのはたったの2球。記録は18球、内1球はホームランという好成績だった。

笹本さんは晴れ晴れとした表情で大槻さんとハイタッチをしている。そして、ちらっと未だお腹を抱えている陽太を見てにっこりと笑った。

それを見た瞬間、私の中である仮説が頭をもたげてきた。
あまり、考えたくない仮説だった。

思い出す。

考えてみれば、試験前に霧島くんを経由して陽太を誘ったのは大槻さんと笹本さんではなかったか?
勉強会をしようと誘ってきたのもこの二人だ。
そして、このゲームを提案したのは大槻さんだ・・・。

全部・・・全部が仕組まれていたとしたら?
笹本優子が陽太とデートするために仕立てられたのだとしたら!?

私は混乱した。
単に友達として陽太と遊びたい、と思っているだけならまだしも、明確に陽太を狙っている女性を眼の前にしたのは人生で初めての経験だった。無意識に、二人は勝ったら霧島くんを選ぶのだとばかり考えていた。

瞬間、先日の手足が冷たくなる感覚が蘇ってくる。
陽太を失ってしまうのではないかというリアルな恐怖だ。

もしも、笹本さんがゲームに勝って、陽太をデートに誘って、そしてそのまま二人がお付き合いすることになってしまったら?

ダメだ。対処法は愚か、そういった未来を具体的に考えることすら出来ない。

陽太はどう思うんだろう。笹本さんは可愛らしいし、おっとりしてて陽太とペースも合いそうだ。笹本さんから告白されたら、陽太は、なんて答えるのだろう?

呼吸がまた浅くなろうとしている。
いくら風香ちゃんが、陽太は私のこと大好きだ、って言ったとしても、本人から直接聞いた訳ではない。

でも・・・。心が闇に落ちそうになったが、寸でのところで、踏みとどまる。

陽太が、取られてもいいの?
ずっと、私を守ってくれた、大事な人が取られるのを、ただただ、指をくわえて見ていていいの?

私の心の中の何かが叫ぶ。

本当に、陽太に自分の気持ちを伝えないまま、何もかも終わってしまって、いいの?
本当にいいの?
!!

よくない・・・。よくないよ。

「次、さんだよ」
大槻さんが言う。
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