第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
そうだ、よくない、全然良くない。
私はバットをぐっと握りしめた。
陽太の方をちらりと見る。だいぶダメージから回復したのか、身体を起こして私の方を見ている。
ー陽太はもしかしたら、私のことを重荷に思っているかもしれないけど!
1球目。私が振ったバットは盛大に空を切った。
しまった、力みすぎた。とにかく当てなくては・・・。集中、集中・・・。
ーそれでも、私は陽太にたくさん、たくさん救われたんだ!
2球目、カツンとあまりいい音ではないが、一応は当たった。
ー私がどんなに情けない目にあっても!
3球目、カンと良い音がなる。そこそこの打毬を返せた。
ー私が、どんなに、つらいときも。
4球目。やっと芯を捉えることが出来た。
ーあなたは・・・あなただけは、どんなときでも駆けつけて、笑顔で私を助けてくれた!
4球目、5球目・・・。
打ちながら視界の端で陽太を捉える。
ーだから・・・、あなたがいない世界なんて。
ごめんなさい・・・私は、私は・・・
17球目。なんとか返せている。
ー考えることすら、出来ないの!
18球目。ギリギリの当たりだが、なんとか返せた。
あと・・・2球。お願い、神様・・・。
「頑張れ!!!」
陽太の声がした。瞬間、え?っと、気が逸れてしまった。ブンとバットが遅れ、空を切る。
しまった!
20球目はなんとか返した。これで18球返したことになる。
でも・・・。
「返した数は同じだね。でも、優子は1球ホームランだしね。ここは優子が1位ってことでいいよね。」
大槻さんが言う。それはそうなるだろう。
まさか、ゴネるわけにもいかない。私は唇を噛むことしかできない。
「、ごめん。変なときに声かけた?」
陽太がこそっと謝ってくる。
「別に・・・」
あまりの悔しさに、それ以上の言葉でなかった。
本当は応援してくれて嬉しかったのに、言い方がぶっきらぼうに過ぎたのではないかと思ったのは、しばらくしてからのことだった。