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彼女はボクに発情しない

第9章 ボクと歌姫たちの三重奏


「うお!」などと声を上げているところをみると、彼自身もその球速に驚いているようだ。最初こそタイミングがわなかったが、徐々に合わせることが出来てきている。野球部の面目躍如といったところか、なんとか13球を打ち返すことに成功した。

3人目は陽太だ。陽太はバッターボックスに入ると、イ◯ローよろしくバットを大きく円を描くようにして振り、ピッとホームランゾーンに照準を合わせるかのように構える。
相変わらず、格好から入るタイプだ。ただ、私は知っている。ああいうときの彼は本当に危ない。

ぐっと前のめりにバットを構える。思ったより様にはなっているが・・・。

風を切ってピッチングマシーンから初級が飛び出す。その直後、「ボクっ」と鈍い音がして、陽太がうずくまった。私は思わず額を手のひらで押さえた。

前のめりになりすぎて、デッドボールになってしまったのである。
慌てて霧島くんが機械を止め、笹本さんが走り寄る。どうやら球は彼のどてっ腹に命中したようだ。痛そう・・・。

「大丈夫?高山くん・・・」
笹本さんはだいぶ心配そうにしている。この間の後ろ頭から血を出した事件に比べれば、これくらいは大したことはない。彼にとっては日常茶飯事である。
まあ、私は小さい頃からこれくらいの陽太のトラブルには慣れているからあまり驚かないが、普通はびっくりするのだろう。

「おい、陽太大丈夫かよ?」
声も出ずにうずくまっているところを見るとダメっぽい。ふるふると頭を振る。続行不能ということで、このゲーム陽太は棄権扱いとなった。

ちなみに残った球は霧島くんが打ち切った。

4人目は笹本さんである。彼女のことはよく知らないが、体育のときもそれほど目立っていた印象はないので、運動はそれほどでもないような気がする。部活動も確か英語部とかだったような・・・。

カッキーン

考えている間に笹本さんのバットが快音を鳴らす。ジャストミートした打球はぐんぐん伸びてホームランゾーンをかすめる勢いだ。

え?

続く第2球、第3球ともに同じくらいの好打球である。

え?え?

おっとりしてて普段目立たない女の子の突然の豹変ぶりに、私の頭がついていかない。そうこうしているうちに、11球目に盛大なファンファーレが鳴り響く。

「ホームラン!」
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