第8章 北風と太陽による諧謔曲
「そう!食事のときなんかもぼけーっとしちゃって、私のはんぺん食べちゃったり納豆にわさび入れたり、味噌汁こぼしたり・・・。部屋にいればいたで、奇声をあげるわ、のたうち回るわ・・・うるさいったらありゃしない。」
「え?ちょ・・・待って・・・」
「だから、私聞いたの、かなでお姉ちゃんとなんかあったのかって。そしたら『分からない』と抜かしやがった、あのトンチキ」
「あの・・・風香ちゃん・・?」
「お姉ちゃんが意味もなく変なことするわけないじゃない?だから、私思ったのよね。絶対陽太が頓珍漢なことしたり、言ったりしてお姉ちゃんが怒ったんだって!」
「いや、そ・・・そうじゃ・・・」
「男って、いっつもそう。デリカシーがないっていうか、あーやだやだ。ねえ?お姉ちゃんもそう思うでしょ?だから、なんかあいつが悪いことしたんだったら言ってよね!私がお姉ちゃんの敵をちゃんと取ってあげるから!!だから・・・」
「風香ちゃん!」
普段は優しいお姉ちゃんが、突然大声出したので私はびっくりしてしまった。
「落ち着いて・・・風香ちゃん。」
え?どういうこと?私が思っていたのと、なにか事情が違うのかしら?
「えっとね・・・風香ちゃん。聞きたいんだけど、陽太は・・・その・・・私のことで、気に病んでいたの?」
気に病んでいた・・・、と言えばそうなのかな?
「なんか、お姉ちゃんが黙って先に帰っちゃったーって言っていた。」
「それで、いつもと違う様子だった・・・?」
「そう。私、すぐわかったんだ。お姉ちゃんと何かあったんだって」
「え?どうして分かったの?」
お姉ちゃんも陽兄と同じ反応だ。眼が丸くなっている。似ているな、この二人。何を当たり前のことを言っとるんだ・・・。
「だって・・・陽兄、お姉ちゃんのこと、大好きだもん」
ギシッと、お姉ちゃんが固まる。顔が真っ赤になる。
いや、嘘でしょ?幼馴染でしょ?ずっと一緒にいたでしょ?『合宿』してたっしょ?
何?何?とうの昔に気づいていなかったの?
「うそ・・・」
お姉ちゃんが、やっと一言つぶやく。
ここに来て、私は非常に自分がまずいことをしたことに思い至った。