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彼女はボクに発情しない

第7章 日々を飾る伴奏曲


そう思って、私はハッとした。何を思ってるの?私・・・。
陽太は別に私のものでもなんでもない。
陽太が笹本さんたちと一緒に勉強したいと言ったら、止める権利なんてない。

だけど・・・だけど・・・。

手にじっとりと嫌な汗をかく。足が、震える。

そうか・・・そうだ、これは・・・『恐怖』だ。

今までこんなことなかった。陽太には男友達はたくさんいた。それはそんなに気にならなかった。でも、女の子の友だちができたら?

その子のことを陽太が好きになったら?

私のことを、見てくれないようになったら?
私のもとに、走ってきてくれなくなったら?

息が浅くなる。
自分で自分の体に手を回し、ぎゅっとしていないと、叫びだしそうだ。

たった、これだけのことで、こんなになってしまう。
陽太が、離れていってしまうことなど考えることが出来ないくらい、私にとって陽太は大きな存在なんだ。

どうしよう・・・。

頭の中に『どうしよう』だけが響き渡る。答のない問だけがぐるぐると巡る。

吐き気がしてきた。いたたまれなくなり、私は席を立つ。教室から、出て、少し落ち着かないと・・・。

教室の扉を出ようとした、その時、
「わりい、ボクには、先約があるんだ」
陽太の声。
「えー!誰よ〜。あたしたちじゃダメだっての?」
大槻さんが不満げな声を漏らす。
「ちょ・・・ルリ・・・」
「いやーダメじゃないけどね。ははは・・・モテる男はつらいねー」
陽太が軽口を言っているのが聞こえる。

そこまで聞いた段階で、私は教室から出て、階段を上がる。屋上に近いところまで上がった。
ここには、普段は誰も来ない。

薄暗い階段の踊り場で、壁に背を預ける。冷たい壁が私を支えた。

浅くて、早い息が漏れる。
胸が苦しい。

陽太の言葉を聞いて私はホッとしてしまった。
嬉しかった。でも、同時に思った。

浅ましい・・・。

何が、『応援する』、だ。
私は陽太にものすごい依存したことを思い知らされた。

陽太の自由を奪って、恋する権利を奪って、がんじがらめにして、なお、貪ろうとしている。

浅ましい・・・浅ましいよ。

立っていられない。私はしゃがみこんでしまう。涙が頬を伝う。口に手を当てて、声が漏れるのを必死に我慢する。そうしていないと、大声で泣き叫びそうだ。

こんなんじゃダメだ。私は陽太を不幸にしてしまう。
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