第37章 格闘訓練
爆豪はその場に仰向けに座り込み、そのまま天井を見上げた。
悔しいし、猛烈に腹が立つ。
けれど、それ以上に最高に面白かった。
そして同時に、確信していた。
(欲しい。あの技術が、あの格闘のキレが)
もし、あの淀みない体捌きを自分の爆発の機動力と組み合わせたらどうなる。
もっと速く。
もっと強く。
もっと確実に敵を圧倒できるはずだ。
その明確な強さの未来が、爆豪の脳裏に視えた。
爆豪はゆっくりと身体を起こすと、真っ直ぐにユカリを見つめた。
「……先輩」
いつになく真面目な、低い声だった。
ユカリが少し驚いたように首を傾げる。
「うん?」
爆豪は迷いのない目で言い放った。
「俺にも教えろ。その格闘、俺に叩き込め」
プライドがないわけではない。
むしろ人一倍高い。
だが、強くなるためなら、必要なものは何だって取りに行く。
それが爆豪勝己という男の強さの本質だった。
ユカリは数秒間、驚いたように目を丸くしていたが、やがて優しく笑った。
「いいよ」
即答だった。
爆豪が少しだけ意外そうに目を細める。
しかし、ユカリの言葉はそこで終わらなかった。
「でも」
その一言に、切島は一瞬で嫌な予感を察知して一歩後ろに下がった。
ユカリは、これ以上ないほど満面の笑みを爆豪に向ける。
「まず一週間は、ひたすら受け身だけね」
切なすぎる沈黙が流れた。
爆豪が眉をひそめる。
「……あ?」
「あ……」
切島は、自分が味わったあの地獄の初日を思い出して遠い目になった。
そんな二人を前に、ユカリは本当に楽しそうに言葉を重ねる。
「大丈夫!爆豪くんなら、きっとすぐ上手くなるよ!」
優しく、けれど絶対に妥協を許さないその笑顔を見つめながら、切島は心の中でそっと手を合わせた。
(爆豪、頑張れ……)
これから始まるであろう地獄の一週間を想像して、切島は心の中でそっとエールを送るのだった。