第35章 常夏SPLASH
そして、ぐんぐんと距離を縮め、あいつの細い腕を、後ろからがしっと力強く掴んだ。
「おい」
低く、けれど有無を言わせない強さを持った声。
「っ……!?」
驚いて勢いよく振り返ったユカリの瞳に、爆豪の険しく、けれど熱を孕んだ視線が真っ直ぐに突き刺さる。
「えっ、爆豪くん……!?」
驚きに丸くなるユカリの瞳。
そのすぐ隣で歩いていた環も、突然の乱入者にビクリと肩を揺らし、驚いた様子で二人の様子を伺うように見つめていた。
爆豪は掴んだ腕にきゅっと力を込め、驚くユカリを自分の方へとぐっと引き寄せた。
「っ、わっ……」
よろめいたユカリの身体が、爆豪の胸元に吸い寄せられるようにして重なる。
密着した距離。
爆豪は彼女の耳元へと顔を寄せ、周囲の喧騒を掻き消すような、低く掠れた声で囁いた。
「―――日曜、空けとけ」
鼓膜に直接響くような、有無を言わせない傲慢な響き。
けれど、その低く、どこか熱を帯びた声のトーンは――あの日、ベッドの上で、自身を激しく求めてきた時の彼の声に、やけに、酷いくらい似ていた。
「っ………」
一気に顔が熱くなるのを感じながら、ユカリは耳まで真っ赤に染め上げ、ただコクコクと小さく頷くことしかできなかった。
「う、うん……わかった、空けておく……」
その返事を聞くと、爆豪は満足したように、掴んでいた腕をゆっくりと離した。
夕日に照らされたユカリの、赤く染まった潤んだ瞳を最後にじっと見つめる。
「じゃあな」
それだけ言い残し、彼はふいっと踵を返した。
ポケットに両手を突っ込み、今度こそ、元の駅への道を戻っていく爆豪。
少し遠くで待っていた切島たちに「何だったんだよ!」と絡まれながら、ふてぶてしい足取りで去っていく彼の広い背中を、ユカリは火照る顔を手で覆いながら、ただ見つめることしかできなかった。