第35章 常夏SPLASH
放課後の三年A組ヒーロー科の寮・共有スペースには、窓の外から傾き始めた夕日が差し込み、リビングを柔らかいオレンジ色に染め上げていた。
ソファに深く腰を下ろしたユカリは、ようやく一息つきながらスマートフォンを眺めていた。
何気なく画面をスクロールしていると、数日前、ミリオから送られてきた短いメッセージ履歴がふと目に留まる。
『サーからいいものもらったよ! 寮にいないけどユカリ、今どこ? 』
「あ……」
ユカリは小さく声を漏らした。
(そういえば、あの日そんな連絡が来てたんだっけ……)
しかし、その日はユカリが帰って来ないと寮中が大騒ぎになり、結局何の話だったのか聞きそびれたままになっていたのだ。
(結局、あれって何だったんだろう?)
ユカリがスマートフォンを見つめたまま首を傾げていると――
バンッ!!
共有スペースの扉が、勢いよく音を立てて開いた。
「ユカリ!環!波動さんもいるかい!?」
部屋中に響き渡ったのは、聞き慣れたどこまでも明るい声。
勢いよく飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべたミリオだった。
いつも以上に上機嫌な様子で、軽やかな足取りでテーブルまで駆け寄ってくる。
「あ、ミリオ」
そのエネルギーに思わずユカリの口元が綻ぶ。
「ちょうど今、ミリオのこと考えてたの」
「え、本当に!?」
「うん。ほら、この前『サーにいいものもらった』ってメッセージ送ってきたでしょ? あれって結局何だったの?」
その言葉を聞いた瞬間、ミリオは「あっ!」と目を丸くし、自分の額を軽くぺちんと叩いた。
「そうだったーー!」
ミリオは豪快に笑いながら肩をすくめる。
「あの日はユカリが全然帰ってこなくてさ、みんな心配でそれどころじゃなくなっちゃって! 俺もすっかり忘れてたよ!」