第32章 退院
数日後―――
朝の病室には、柔らかな陽射しが差し込んでいた。
白いカーテンが風に揺れ、窓の外では青空がどこまでも広がっている。
数日前まで感じていた消毒液の匂いも、今日はどこか懐かしく思えた。
コンコンと軽くノックが響く。
「失礼します」
担当医と看護師が病室へ入ってきた。
ユカリは自然と背筋を伸ばす。
「検査結果ですが、異常はありません」
医師はカルテを閉じ、穏やかに微笑んだ。
「経過も良好です。今日で退院して大丈夫ですよ」
その一言に、ユカリの表情がぱっと明るくなる。
「……本当ですか?」
「ええ。ただし、無理は禁物です。体力は落ちていますから、しばらくは休養を優先してください」
「はい」
医師と看護師が病室を出ていく。
ユカリは大きく息を吐いた。
「退院……」
小さく呟く。
長かったようで、あっという間だった入院生活。
心配して毎日のように来てくれた友達。
クラスメイト。
先生。
いろいろな人の顔が浮かび、ユカリは自然と笑みをこぼした。
「帰れるんだ……」
その言葉を口にした途端、ようやく実感が湧いてくる。
窓の外を見ると。
澄み渡る空が、まるで祝福してくれているようだった。