第31章 病院
やがて信号が青へ変わる。
電子音が静かに鳴り響き、爆豪はゆっくりと歩き出した。
ユカリは今も考えている。
ヴィランとは何か。
ヒーローとは何か。
善悪だけでは割り切れない現実を。
簡単には答えなんて出ない。
あいつはきっと、苦しみながら考え続ける。
それでも。
爆豪の中で、変わらないことが一つだけあった。
もしまた。
ユカリが危険な目に遭うなら。
自分はまた助けに行く。
理由なんてない。
損得でもない。
理屈でもない。
そうしたいから。
ただ、それだけだ。
見上げた夜空には、雲の切れ間から淡い月が顔を覗かせていた。
その光を見つめながら、爆豪は小さく鼻を鳴らす。
「……考えろ」
その言葉がユカリへ向けたものなのか。
それとも、自分自身へ向けたものなのか。
本人にもわからない。
「ちゃんと」
ユカリは逃げない。
どれだけ苦しくても、目を逸らさず、自分なりの答えを探し続ける人間だ。
だから。
今は信じて待つ。
それでいい。
静かな夜道を、爆豪はゆっくりと歩いていった。
月明かりだけが、その背中を静かに照らしていた。