第30章 反省文
―――翌朝。
朝の情報番組は、どの局をつけても同じ話題を扱っていた。
【雄英高校生徒、無事保護】
【ヴィラン連合による誘拐事件、生徒は軽傷】
【プロヒーローと警察が捜査継続】
画面の下には速報のテロップが流れ続ける。
スタジオのコメンテーターたちは深刻な表情で事件について語り、街頭インタビューでは不安そうな市民の声が流れていた。
テレビだけではない。
ネットニュースも、新聞も、SNSも、朝からその話題で溢れ返っている。
雄英高校の生徒がヴィラン連合に誘拐された。
そして、無事に保護された。
平和の象徴が引退してなお、不安定な情勢が続く社会。
その中で起きた大事件だ。
注目されないはずがなかった。
ユカリ本人はというと。
「念のため」という医師の強い勧めにより入院していた。
身体には大きな怪我はない。
治癒能力もある。
それでも監禁生活による疲労、連日の緊張状態、そして救出時の怪我。
目に見えない負担は決して小さくなかった。
検査だけは受けておけ。
そう言われた結果だった。
―――病室。
白いカーテンが風に揺れる。
窓の向こうでは澄んだ青空が広がり、遠くから鳥の鳴き声が聞こえてきた。
病院独特の消毒液の匂い。
規則正しく響く空調の音。
慌ただしかった数日間が嘘のような静けさだった。
ベッドの上でユカリはぼんやりと天井を見上げる。
命を狙われ。
攫われ。
ヴィランたちと過ごし。
そして救出された。
そんな濃すぎる数日間のあとだからだろうか。
「……静かだなぁ……」
何も起こらない朝が少しだけ不思議に感じられた。