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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第28章 焦燥







―――時は少し遡る。

ユカリがヴィラン連合に誘拐された日の夜。




林間合宿は中止、生徒たちは即座にバスに乗せられ、雄英寮に戻された。

教師の指示がない限り、当面は一切の外出禁止だそうだ。

1年A組の共有スペース。

誰も騒がない。

誰も笑わない。

テレビも消えている。

切島は拳を握る。

上鳴は俯いている。

他のみんなも黙っていた。

そして窓際。

爆豪が一人で座っている。

誰も近寄れない。

怒っているのではない。 

荒れているのでもない。

その方がまだ良かった。

静かすぎた。

爆豪は窓の外を見ている。

何を考えているのか誰にもわからない。

ただ。

頭の中にはずっと最後の光景が焼き付いていた。

黒霧。

伸ばした手。

届かなかった指先。

ユカリの顔。

取り返す。

あの時口にした言葉。

それだけが残っていた。


一方の3年寮。

ねじれはユカリの部屋の前に立っていた。

灯りの消えた扉。

当たり前だ。

本人がいないのだから。

「……ユカリ」

ぽつりと呟く。

返事はない。


ミリオは少し離れた場所で壁にもたれている。

何度も何度もスマホを確認する。

もしかしたら。

ユカリからの連絡があるんじゃないかと願って。


環はソファに座っていた。

いつものように本を開いている。

だが。

一ページも進んでいない。

それでも本を開いているのは。

目を背けているからだ。

日常からユカリが消えたという現実から。



その日は、誰もが眠れない夜になった。


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