第26章 林間合宿
放課後の雄英高校。
授業を終えた生徒たちが次々と校舎から出てくる時間帯。
玄関付近もいつも通り賑やかだった。
「あれ?」
靴を履き替えながらユカリが足を止める。
見覚えのある小さな姿。
「湊くん?」
ぱっと顔を上げた男の子が駆け出した。
「おねえちゃん!」
勢いよく飛び込んでくる湊を、ユカリは慌てて受け止めた。
「わっ!」
「おねえちゃん会いたかった!」
満面の笑み。
数日前、夏祭りで泣きじゃくっていた子とは思えないほど元気だった。
「こら湊」
隣のお母さんが苦笑する。
「お姉ちゃん困ってるでしょ?」
「だって会いたかったんだもん!」
「もう……」
困ったように頭を下げる母親。
「突然押しかけてしまってすみません」
その横には相澤も立っていた。
「お前に改めて礼が言いたいと、わざわざ学校に寄ってくださったそうだ」
ユカリは驚く。
「え、そんな……」
すると湊のお母さんが真剣な顔になる。
「本当にありがとうございました」
深く頭を下げた。
「あの日からこの子、毎日ずっとユカリさんの話ばかりなんです」
湊が元気よく手を挙げる。
「うん!毎日おねえちゃんの話!」
「毎日なの?」
ユカリが思わず笑うと、湊は大きく頷いた。
「おねえちゃん、すごかった!」
「ぜんぜん怒らなかったし!」
「いっぱいほめてくれたし!」
「ぎゅーってしてくれた!」
熱弁である。
周囲の生徒たちも思わず微笑む。
「それでね!」
湊は胸を張った。
「ぼく、ヒーローになる!」
その場が少し静かになる。
ユカリも目を丸くした。
「ヒーロー?」
「うん!」
湊は力強く頷く。
「あの日決めた!」
「おねえちゃんみたいなヒーローになる!」
その言葉に。
ユカリは少しだけ言葉を失った。
自分が誰かに憧れられるなんて。
考えたこともなかった。