第25章 夏祭りボランティア
「彼女は常に輪の中心にいる人物です」
黒霧の声は淡々としている。
「個性の安定性、判断力、対人能力……いずれも高い評価なのはもちろん、大変優秀な俯瞰力もお持ちの方のようです」
トゥワイスが吹き出す。
「おいおい、優等生かよ!狙われるタイプじゃねぇかそれ!」
荼毘が鼻で笑う。
「ヒーローごっこの中心人物ってわけか」
その言葉に、死柄木がゆっくりと立ち上がった。
掻いていた首を止める。
「……気に入らないな」
低い声。
花火の光が窓に反射する。
その赤と青の光が、死柄木の目元を不規則に照らした。
「ああいう“助ける側の顔”」
「見てるとイライラする」
黒霧が一歩前に出る。
「それで、いかがいたしますか」
少しの沈黙。
死柄木は映像を見つめたまま言った。
「林間合宿」
その単語だけで、空気が変わる。
トゥワイスが身を乗り出す。
「おっ、ついに動くのか!?なぁ!?なぁ!?」
トガが小さく笑う。
「楽しみ……」
荼毘は火を指先に灯したまま無言。
黒霧は静かに頷く。
「承知しました」
死柄木は映像から目を離さないまま続ける。
「引き入れる」
「できなきゃ……」
首を掻く指が再び動く。
「壊す」
その言葉は軽いのに。
重かった。
花火の光とは違う。
冷たい決定だった。
トゥワイスが笑う。
「ヒーローの卵狩りってわけか!いいねぇ!」
トガは花火を見ながら、どこか楽しそうに呟く。
「ユカリちゃん、どんな顔するかなぁ」
荼毘は背を向ける。
「どうでもいい」
ただ一人。
黒霧だけが静かに窓の外を見ていた。
遠くで上がる花火。
そしてその下で笑う少女。
雄英の平和。
その裏側で。
確実に、何かが動き始めていた。