第10章 猫の日
「手前の今の話が嘘じゃあねェ事だけは判った」
「…有難うございます」
「顔を上げろ」
中也の言葉に、男は躊躇いながらもゆっくりと顔を上げた。
「3日ってことは明後日には戻るってことだな?」
「はい」
「如何する?アリス」
「え?私!?」
突然話を振られて驚くアリス。
「そりゃあそうだろ。手前に対して立派な不敬罪だ。処分は手前が決めろ」
男の視線が猫に向く。
「けど、私、お話しもできるし困ってない」
「そうか。一発ぶん殴っておくくらしといた方が示しがつくんじゃねえの?代わりに殴るか?」
「中也が殴ったりしたら頭もげるでしょ」
「違いねえ」
アリスはハァ、と溜息を付き、男の前にトコトコと歩いていく。
そして、猫の手で男の頬をムニッと叩いた。
「此れで良い?」
「おう。ケジメだからな」
男は痛くもない頬に手を当てて、ぽかんとした様子で中也達を見た。
「被害者のアリスが、それで仕舞いにしてやるって云ってるんだ。俺はこれ以上、何もしねえ」
「……。」
「但し、その異能は指示がない限り今後、敵にしか使用するな」
「承知いたしました…!」
男は深々と頭を下げた。
男が退室していって数分後ーーー
「中也や、這入るぞ」
「はい」
中也は、扉の外の声を聞いて扉を開ける。
そこに立っていたのは、声の通り紅葉だった。
ソファに通すと、紅葉にお茶を出す中也。
それを一口啜ると、懐から折り畳まれたハンカチを取り出し、テーブルにおいた。
そして、ゆっくりと広げた中から出てきたのは
「あ!私の指輪!」
アリスは嬉しそうに指輪に駆け寄った。
「済まぬのうアリス」
「ううん、無事なら善い。有難う紅葉姐!」
「お主は寛大じゃ」
アリスの頭を撫でてそういう紅葉。
「中也や、あの者達の処分は私に任せてもらえんかの?」
「構いませんよ。アリスもこんなだし…でも二度目は無いってことを重々云い置いてください」
「無論じゃ」
暫く世間話をして部屋に帰っていった紅葉。
「元に戻るまで中也が預かっておいて」
「おう」
中也は指輪を自身のハンカチに包むとそのまま懐に入れた。
「本当に善かった」
安堵するアリスを膝の上に乗せ、撫で回す中也だった。