第10章 猫の日
「うん、もしかしたらと思うことがある。けど……」
アリスは耳を垂れて、話す。
その仕草を見て中也は何か悟ったのか、優しくアリスを撫でてやった。
「話は家でゆっくり聞いてやる」
「……うん」
タイミングよくエレベーターが到着する。
それに乗り込み、中也たちは帰路に着いたのだった。
ーーー
「猫の身体にゃ塩は毒だからな」
「いつもの魚より、ものすごく美味しく感じる!」
お風呂に一緒に入り、食卓についた2人。
話しすらできない完全に動物になっていた部下達を見て、アリスの身体を気遣った中也は、アリスの目の前に鮪の刺身を出した。
それをアリスは、もぐもぐと食べては感動していた。
「食べすぎるなよ」
「にゃー」
「猫に成りきるなよ」
自身も刺し身をアレンジしてカルパッチョにし、酒を飲む中也。
「それで?」
「うん?」
「何か思い当たる節があンだろ?」
「あー……」
夢中で食べていたマグロから視線を逸らすアリス。
そして、意を決したように口を開いた。
「紅葉姐のところに配属された新人さんが居るでしょ?」
「あ?ああ、確かよく4人でつるんでる奴等か」
「多分その人達」
アリスはコクリと頷く。
「その内1人は、最近見掛けなくなったんだけど、残りの3人がね……その、私の指輪……を気にしてて」
「なんか前にも云っていたな」
以前、その4人に向けられた視線の先がアリスだったことを思い出す中也。
「指輪だけ見当たらない事を考えたらもしかしたら…と思って」
「成程な」
「……違ったら御免ね」
「まだ何も分かってねえ段階だ。可能性を1つずつ潰して行こうぜ」
「うん…」
アリスの頭を優しく撫でてやる中也。
そんな時に、ポツリと浮かんだことを口にするアリス。
「戻れなかったら如何しよう?」
「最終手段はある」
「……もしかして、治兄?」
物凄い嫌そうな顔で云ったため、何を云っているのか瞬時に想像がついたアリス。
アリスの口から出てきた名前に舌打ちする中也。