【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第16章 海×陸
――数分後。
「おいおい、冗談だろ……」
ウシオは額に滲んだ汗を乱暴に拭った。
薄暗いフロアの中を、小鳥ほどの大きさの呪霊が無数に飛び回っている。
最初は一体だった呪霊。
銃を構える姿勢で体内をめぐる血液中の水分から
弾丸1発を作り出し、放った結果…
「キリがねぇ……!」
一体が二体に。
二体が四体に。
四体が八体に。
そして今では――。
視界の先を埋め尽くすように、64もの呪霊が羽音を立てながら宙を舞っている。
「~~~っ、き、気持ち悪い…」
ウシオから持たされた刀を握りしめたリンの顔が引きつる。
ウシオは舌打ちした。
その瞬間。
ぐらり、と視界が揺れる。
「っ……」
一歩踏み出しかけた足が僅かによろめいた。
頭が重い。
視界の端が白く霞む。
喉が異様に渇く。
(っち……)
ウシオは奥歯を噛み締めた。
(こいつのために刀を一本)
視線の先にはリン。
近接戦闘が苦手な彼女の護身用として生成した水の刀。
(それから自分用に短剣を一本)
右手に握る刃へ視線を落とす。
(それから弾丸約五十発……)
周囲に水はない。
廃ビルの乾いた空気。
自らの体内から水を捻り出していた。
身長170cm
体重65kg
想定される総血液量は約4.5~5L。
そのうち血漿が占める割合は約55パーセント。
さらに血漿の約9割は水分で構成されている。
自由に扱える水分量は、多く見積もっても2~2.5L程度。
刀一本で約150ml。
短剣一本で約75ml。
弾丸50発で約50ml。
合計275ml。
血液中の利用可能な水分のおよそ1割強。
数字だけ見れば僅かにも思える。
だが、それは安静時の話。
戦闘中にこれだけの水分を失えば話は別だった。
口の渇き。
上昇する心拍数。
集中力の低下。
そして、じわじわと広がる頭痛。
それでも。
「……くそ」
ウシオは短剣を握り直した。
(クソ…。あたまん中がぼやけてきた……)
耳障りな羽音が周囲を満たす。
64の呪霊が一斉に二人を見下ろしていた。
だが、まだ倒れるわけにはいかない。
リンには鈴がいる。
ウシオは周囲を見渡し解決の糸口を探す。
そして深く息を吐き、再び呪力を練り上げた。