【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第12章 邂逅×解放
「君と久しぶりに話ができて楽しかったよ」
その笑みは穏やかだった。
かつて高専で過ごした時間を見ているようだった。
「だが、そろそろ時間だね」
そう言って視線を落とす。
夏油はしばらくその顔を見つめる。
まるで一秒でも長く記憶に刻み込もうとするかのように。
そして。
「……また会おう」
誰にも聞こえないほど小さく呟くと、そっと身を乗り出した。
五条は何も言わない。
ただ黙って両腕を差し出す。
夏油は眠るを丁寧に抱え直し、五条へ引き渡した。
腕の中に伝わる温もり。
確かな重み。
五条は静かに抱き留める。
その瞬間だけ。
夏油の手が離れることを躊躇うように僅かに止まった。
だが次の瞬間には、何事もなかったかのように離れていく。
冬の風が二人の間を吹き抜けた。
夏油は背を向ける。
そして、静かに微笑んだ。
「……傑」
五条が静かに呼ぶ。
夏油は振り返らない。
それでも聞こえていることは分かっていた。
「……あの件を容認するつもりはない」
風が止む。
「けど」
夏油が僅かに視線を向けた。
五条は主人公の寝顔を見下ろす。
そのまま少しだけ笑った。
「会えてよかったよ」
静かな声だった。
どこか呆れたようで。
どこか懐かしむようで。
そして何より。
失ったはずの時間を惜しむような声だった。
夏油は目を見開く。
ほんの一瞬だけ。
だが、その表情はすぐに消える。
代わりに浮かんだのは、昔と変わらない穏やかな微笑みだった。
「そうかい」
その一言だけ。
やがて。
五条の姿がふっと揺らぐ。
「じゃあね」
まるで昨日も会っていたかのような軽い別れの言葉。
次の瞬間。
冬の風だけを残して、その姿は掻き消えた。
龍の背に残されたのは夏油一人。
遠ざかる気配を感じながら、夏油は静かに目を閉じる。
そして。
「私もだよ、悟」
誰に聞かせるでもなく呟いた言葉は、夜明け前の空へと溶けていった。