第7章 Lesson6 掛け違えたボタン
「お早う御座います、アンドリュースさん」
大聖堂の一番奥にある主祭壇では、聖・アンドリュー12世が静かに祈りを捧げていた。
この聖アンドルーズ大聖堂の殆どは石造りで出来ており、巨大なアーチで出来た回廊などには、ホグワーツに近い荘厳な雰囲気を感じられる。
しかし主祭壇の周囲だけは、どこか異なる。厳かながらも神秘的で、思わず息をのむような美しさを兼ね備えていた。窓から差し込む光が祭壇を淡く照らし、金色の装飾が静かに輝いている。
華美なだけではない。長い年月を経ても失われない、祈りのための場所としての気高さがあった。
「おや、お早う御座います皆さん。これからお食事ですか?」
聖・アンドリュース12世は、今日も今日とて目に白い布を巻いているにも拘らず、迷うことなくハーマイオニーの顔を見てにこりと笑った。
皆もう慣れっこなのか、それとも「この人はこういう人だ」と言う認識が強いのか、この笑顔に疑問を持つ生徒は数少ない。
「アンドリュース様は何をお祈りしていたのですか?」
「アンドリュースで結構ですよ、アレクセイ。私の願いは唯一つ、迷える人々の安寧です」
「この混乱の世の中、支柱を失い、迷える人々がどれほど多くなったか」と、聖・アンドリュース12世は悲しそうに言った。
確かに先ほどのアストリアもその内の一人なのだろう。何が是で何が非なのか、今この国はそれを問われている最中なのだ。
――だが、祈るだけで何かが良くなるわけがない。それがレイの本音だった。