第7章 Lesson6 掛け違えたボタン
ふとドラコの方を見ると、レイと同じく、いや、レイ以上に怪訝な顔をしていた。眉間にしわを寄せ、何か深く考え込んでいる。
そうだ、祈るだけでは何も変わらない。だがドラコ達の様に、変わりたいと思っている人の気持ちを足蹴にしてはいけない。レイはそっとドラコの手を握った。
「あんまり一人で抱え込むなよ?ドラコ」
「……君に心配されるとは、僕も落ちたものだな」
そう言いながらも、ドラコは手を振りほどかなかった。むしろ、握られた手をほんのわずかに握り返す。その小さな反応に、レイの胸がくすぐったくなった。
けれど、それを素直に認めるのは癪だった。
「そう言うセリフは、たかが小鹿一匹、ちゃんと面倒見てから言うんだな」
「2人そろって、足が震えていたぞ?」と挑発すると、ドラコの眉がぴくりと動いた。次の瞬間、握っていた手に爪を立てられた。
「痛いっ!おいドラコ、直接攻撃は卑怯だぞ!!」
「はッ!ちょっと手に力を入れただけさ。君の方こそ口先ばかりで、手元がお留守じゃないか」
「だからと言って、レディの手に爪痕を立てる馬鹿がどこに居る!!」
「はあ、また始まったわ……」
痴話喧嘩は犬も食わないと、呆れたハーマイオニー達は先にテーブルについて朝食を取り始めた。
――あぁ、そうだ、これだ。この雰囲気、この距離、このやり取り。これこそ私が求めていたものだ。
家のことも、戦争のことも、卒業後の結婚のことも、今すぐ答えを出せる問題ではない。それでも、こうしていつも通りに言い合っていられるのなら、少なくとも今は、それで良いのかもしれない。
幼い頃から何百回も繰り返してきた下らない口喧嘩をしながら、レイは漸く掛け違えたボタンが元に戻ったような、そんな心地がした。