第7章 Lesson6 掛け違えたボタン
「ジニー、君は本当に兄上にそっくりだな。余計なことを言わせたら世界一だ」
「事実を言っただけじゃない」
「事実だからこそ、黙っているべきこともあるんだ」
「へえ。ドラコにもそんな分別があったのね」
傍から聞いていたハーマイオニーが、呆れたようにため息をつく。その横で、アレクセイは羽ペンを片手に、まるで遠い世界を眺めるような目で二人を見ていた。
「それにしても君たちも大変だね。僕は日々の宿題をこなすだけで精一杯だよ」
「そう言えば、貴方の家も古いって言っていたけれど、聖28一族との繋がりは無いのかしら?」
ハーマイオニーの質問に、アレクセイは目線を上に向けた。
「ん~、無いと思うよ?それに僕の家はあえて名前を隠して生きてきたから」
「名前を隠して?」
「ほら、15世紀頃は魔女狩りが盛んに行われていただろう?その所為で存在を隠さざるをえなかったんだ」
「なるほどな」
「当時は辺境に追いやられたり、わざとマグルと結婚して村に溶け込んだりで、大変だったらしいよ」
――と、まるで他人事のようにあっけらかんと言うアレクセイに、レイは小さく笑った。
ついさっきまで純血主義がどうのこうのと頭を悩ませていたのに、彼の一言で場の空気が明るくなった。先の戦争に全く係わっていないと言う事が、彼を一種の清涼剤にしていた。
「でも、レイの家も聖28一族じゃないよね?何で?」
「ああ、我が家は一度取り潰されているからな、その所為じゃないか?」
「取り潰し?貴女の家が!?」
長い間一緒に居たにもかかわらず、初めて聞く話に、ハーマイオニーとジニーが同じタイミングで驚きの声を上げた。
そういえば、まだ言ってなかったなと思ったレイは、出来るだけ淡々と説明した。
「私の曽祖父って人が、酒に賭博に女にとかなりだらしない人だったらしく、最後には爵位さえも金に換えて愛人と共に妻子を残して夜逃げしたらしい。そして残された祖父が義理母と義理妹を幼いながらも必死に食わせていたらしいんだが、2人とも病弱な体だったらしくて、祖父が成人する前に亡くなったらしい」
「さっきから“らしい”ばっかりね」
「まあ、チャンドラーが説教の時に延々と喋っているのを右から左に聞き流していただけだからな。真面目に聞いていたら夜が明けるぞ」