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その距離、反則につき。

第6章 Lesson5 芽吹き始めた才能


 やがて、スプラウト先生は別の温室へ移動した。先生の姿が見えなくなると、ネビルは使い終わった道具を片づけ、作業台を整え始めた。どうやら一通り仕事を終えたらしい。

「ネビル」
「うわっ!」

 そっとネビルに声をかけると、ネビルは肩を跳ねさせた。手にしていた小さな鉢を落としかけ、慌てて両手で抱え直す。その拍子に、鉢の縁から少量の土がこぼれ落ちた。

「レイ!?ハーマイオニーまで!」
「驚かせてごめんなさい!まさかこんなに仕事を任されていたなんて思わなくて!」
「ああ……うん」

 ネビルは照れくさそうに笑って、手にしていた鉢を近くのテーブルに静かに置いた。

「先生が、薬草学の授業を手伝ってみないかって声をかけて下さったんだ。今は植物の管理や、授業で使う材料の準備をしているよ」
「それって、つまり先生の助手ということになるのかしら?」
「助手というか、先生には、その……引退する時、後を任せたいって言われていて……」

 最後の方は、ほとんど聞こえないほどの小声だった。言い終えたネビルの顔が、みるみる赤くなる。レイは思わず目を見開いて彼を見つめた。
 ――スプラウト先生の後継者。その言葉が意味するものを考えれば、単なる手伝いとはわけが違う。長年、ホグワーツの薬草学を支えてきた教授が、自分の後を託したいと思うほど、ネビルの知識と能力を認めているということだ。
 昼間、廊下で逆さ吊りにされていた少年と、目の前で植物を管理する少年。同じ人物なのに、こうも印象が違うものだろうか。

「すごいじゃないか、ネビル!」
「そんな、大したことじゃないよ。ただ薬草学が好きなだけで……」
「好きなだけで、先生から後任をお願いされるかしら?」

 ハーマイオニーが優しく微笑むと、ネビルはますます顔を赤くした。

「全ては貴方が努力してきた結果よ」
「……ありがとう」

 ネビルは嬉しそうに笑った。
 彼は昔から、植物のことになると熱心だった。けれど、好きなことに打ち込むのと、それを将来の仕事として見据え、責任を持って取り組むのとでは、意味が違う。ネビルは今、その境目を越えようとしているのかもしれない。
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