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その距離、反則につき。

第6章 Lesson5 芽吹き始めた才能


「少し、見に行ってみない?」
「もちろん」

 ハーマイオニーが提案に、レイは口元をニヤリと歪めた。
 課題を中断するのは気が引けたが、ほんの少し様子を見るだけなら問題ないだろう。2人は参考書を閉じ、ネビルの後を追った。

* * *

 城内の廊下とは異なり、温室の周辺には土や葉の匂いが漂っていた。ガラス越しに差し込む午後の日差しが、葉の表面に小さな光を散らしてキラキラ輝いている。レイがそっと温室の扉を押し開けると、中ではネビルが忙しそうに働いていた。
 作業台には次の授業で使うであろう植物の鉢が整然と並んでいる。ネビルはひとつずつ状態を確かめ、傷んだ葉を取り除き、植え替えが必要な鉢を選り分けていた。その動作には無駄が見当たらない。

 植物の管理だけではない。棚に置かれた器具はきちんと整理整頓され、使い終わった物は全て元の場所へ戻されている。ネビルは水やりを済ませた鉢に印をつけ、管理記録を確かめながら、次に何をすべきかを判断していた。
 それは先ほど図書館で見かけた、山ほどの本を抱えて歩いていた少年と同じ人物とは思えないほど、落ち着いた姿だった。

「その鉢は、そろそろ植え替えた方がよさそうね」

 奥から声が聞こえてきた。声の主はスプラウト先生だった。優し気な雰囲気の中には授業中のようなピリリとした空気はなく、ネビルの作業を安心して見守っていた。

「はい。根がかなり伸びていますから、今日中に済ませておきます」
「助かるわ。明日の授業で使う苗も、忘れずに準備しておいてちょうだい」
「わかりました」

 ネビルは即座に返事をし、手元の記録を確認した。
スプラウト先生がネビルに仕事を任せている。それも、ただ植物を運んだり水をやったりするだけではない。どの鉢に手を入れるべきかを判断させ、授業の準備を任せ、植物の管理まで委ねている。
 レイは思わず目を瞬かせた。

「……ハーマイオニー」
「ええ。私も驚いているわ」

 レイがそっとハーマイオニーに囁くと、彼女も目の前の光景を興味深そうに見つめていた。
 ハーマイオニーの表情には驚きだけでなく、喜びも浮かんでいた。ホグワーツ時代、ずっと彼の面倒を見ていた彼女にとって、これは嬉しい誤算だったのだろう。
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