• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

その距離、反則につき。

第6章 Lesson5 芽吹き始めた才能


「先に寮に帰ったんじゃないか?」
「でも、課題もあまり進んでいないように見えたのよ。授業の後も、どこかへ急いでいるみたいだし」

 ハーマイオニーは不思議そうに首を傾げた。確かにあの真面目なネビルが、授業が終わるなり課題もせずに姿を消すなど、少し不自然かもしれない。
 その時、図書館の扉が開いた。反射的にそちらへ目を向けると、ネビルが両腕いっぱいに本を抱えて入ってくるところだった。分厚い専門書が何冊も重なり、今にも崩れそうになっている。彼は前がよく見えないらしく、足元を確かめながら慎重に歩いていた。

「ネビル!」

 ハーマイオニーに呼ばれ、彼は足を止めた。

「えっ?ああ、ハーマイオニー。どうしたの?」
「それはこっちのセリフよ。宿題もせずにそんなに本を抱えてどうしたの?」
「えっと、その……ちょっと調べものをしていて」

 ネビルは歯切れの悪い返事をした。よく見ると、耳がほんのり赤くなっている。何か隠しているというより、話すのが気恥ずかしいといった様子だった。

「調べもの?」
「うん。スプラウト先生に頼まれていることがあるんだ」
「先生に?」
「そう。だから、ちょっと忙しくて……」

 ネビルは抱えていた本を持ち直した。話を切り上げたがっているのが見て取れた。レイとハーマイオニーは視線を交わした。

「忙しいって、宿題はどうしているの?」

 同じ7年生であるネビルも、NEWT対策と日々の課題を両立させる大変さは重々承知のはずだ。それなのに授業以外に時間を割くと言うことは、どこかできっと無理をしているはず。
 だがネビルは少し困った様に笑顔を見せただけだった。

「できる分は、もう終わらせたよ。残りは戻ってからやるつもりなんだ」

 そう言ってカウンターで本を返却すると、再び図書館を出て、足取り早く温室の方へ去って行った。その後姿を、レイとハーマイオニーが見つめる。
 スプラウト先生に頼まれた仕事。山のような専門書。急いで温室へ向かう足取り。どれもただの用事にしては少々気になる。

「……温室で何をするのかしら?」
「さあ?」

 レイは肩をすくめた。しかし、好奇心が刺激されているのは自分でもわかった。ネビルが何かを隠しているというより、2人の知らないところで、彼が何をしているのかが気になったのだ。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp