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その距離、反則につき。

第6章 Lesson5 芽吹き始めた才能


 ふと、レイは温室の奥に目を向けた。そこには、ほかの場所から少し離れた、使われていない花壇があった。雑草は伸び放題で、地面を覆い尽くしている。土は長い間耕されていなかったらしく、表面が固く締まっていた。
 かつては何かが植えられていたのだろうが、今ではその名残すら見当たらない。そんな花壇の脇に、鍬と小さな道具箱が置かれていた。

「ネビル。あの花壇は?」
「ああ、あれ?」

 レイが指をさすと、ネビルの表情が少し明るくなった。

「使われていないみたいだから、アンドリューさんから許可をもらって、少しずつ手入れを始めたんだ。土を整えれば、また植物を育てられると思って」
「……どうしてそこまで?授業もあって大変だろう?」

 先生の手伝いだけでも、かなり忙しいはずだ。それに山の様な課題だってある。レイの問いに、ネビルは手を止め、少し考えるように視線を落とした。

「そうだね。確かに大変な事もいっぱいあるよ」

 ネビルは荒れた花壇を見つめた。そして「でもね」と言いながら、彼は土に鍬を入れた。ざくり、と乾いた音がした。ネビルは掘り返した土をほぐし、小石を取り除き、根を張った雑草を丁寧に抜いていく。

「植物は、きちんと世話をすれば応えてくれるんだ。時間はかかるし、失敗することもあるけれど……それでも、少しずつ変わっていくのを見るのは楽しいよ」

 急がず、雑に扱わず、ひとつひとつ確かめながら作業を進めていく。そんなネビルの声には、気負いも誇張もなかった。ただ、自分が好きなものについて語る、穏やかな喜びがあった。

 一見すると、ネビルは昔と何も変わっていない様に見えるかもしれない。実際、突然声をかけられれば飛び上がるし、慌てれば手元が狂う。
 そうした性格がすっかり消えたわけではないが、彼はもう昔の彼ではなかった。自分の進む道を、自分自身の手で耕しているのだ。
 そして、その土から何が芽吹くのか――それを見届けるのも悪くない。

 ハーマイオニーも同じ気持ちなのだろう、クリスと一緒にその姿を見つめながら、2人は静かに微笑み合った。
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