第6章 Lesson5 芽吹き始めた才能
スリザリン生の一人が叫ぶ。彼らはハーマイオニーの顔を見るなり、ばつの悪そうな表情を浮かべ捨て台詞と共に廊下の向こうへ去って行った。
「何がグリフィンドールだ、腰抜けめ!」
「貴様ッ!」
「いっ、いいよ、レイ!」
逆さ吊りのまま、ネビルが慌てて声を上げる。だが、レイは聞いていなかった。
いや、聞こえてはいたが、今さら手を止める気はなかった。友人を襲い、あまつさえ嘲笑った相手を、何もせずに見逃すつもりなどない。
「レイ、駄目よ!」
「――っ!!」
ハーマイオニーが制止する声と、いつの間に背後に回っていたのか、ドラコがレイの杖腕を掴んだのは殆ど同時だった。
「そこまでだ、レイ。ヤツらには後で監督生である僕から注意しておく」
「信用ならないと言ったら?」
「スリザリンとグリフィンドールの仲は、今以上にこじれる事になるな」
ため息交じりに「少しは頭を働かせろ」と言うドラコに、レイは舌打ちした。確かにこれではイタチごっこだ。それを阻止したいのはドラコだけではない。
その間にも、ネビルは逆さ吊りのまま、どうにか自分の杖を取り出そうと身体をよじっていた。しかし、片手でローブを押さえ、もう片方の手でポケットを探ろうとするものだから、その姿はますます間抜けに見える。
「ネビル、動かないで!」
ハーマイオニーが杖を構え、呪文を唱えた。次の瞬間、ネビルの身体がふわりと落ち、彼は両足で床に着地した。
「大丈夫、ネビル?」
「うん……ありがとう、ハーマイオニー」
ネビルは乱れたローブを直し、赤くなった顔を隠すように俯いた。
確かに、ネビルには少々抜けているところがある。昔から慌てると失敗しがちだし、やり返すという言葉も知らないから虐めの標的にされやすいのだろう。
けれど、レイはその事実を単純に笑い飛ばすことができなかった。レイはドラコに杖腕を握られつつも、逃げていった廊下の奥を睨み、ギリリと歯を食いしばった。