第6章 Lesson5 芽吹き始めた才能
「そうそう。それで良いのよ」
「……ハーマイオニーはどうしてそんな簡単に学園生活に順応できるんだ?」
「あら、これでも苦労しているわ」
そう言いながらも、彼女はすでに次の課題に取りかかっていた。
机の上には参考書が何冊も開かれ、必要な箇所には細かな書き込みがある。彼女の羊皮紙には整然と文字が並び、羽根ペンは少しの迷いもなく走り続けていた。
そんな彼女の胸元では、主席を表すPのバッジが談話室の明かりを受けて光っている。レイはそのバッジを眺め、心の中でそっと嘆いた。
そうだった。そもそも、ハーマイオニーとは頭の出来が違うのだ。もう一度ため息をつき、レイは課題に目を落とした。
実技はまだ良い。完璧ではないにしろどの術もそれなりに形になる。が、問題は座学だった。どの授業も、求められる水準が一段も二段も上がっている。しかも、授業中に理解したつもりでも、それで終わりではなかった。
日々の課題をこなすだけでは足りず、復習を怠ればすぐに知識が曖昧になる。予習をしなければ、次の授業で説明についていけなくなる。そう、今のレイのように……。
「はあ……やるしかない、か」
羽根ペンを握り直し、レイは再び課題に取りかかった。
ここで投げ出すわけにはいかない。NEWTで良い成績を修め、卒業後はパラケルスス研究所で精霊や素精霊の研究に携わる。それが彼女の目標だった。
それに、今ここで逃げ出してしまえば、本当に一か月後にはドラコと式を挙げる羽目になるかもしれない。それだけは絶対に避けたい。
レイは眉間に皺を寄せ、羊皮紙に向かった。その時だった。談話室の扉の向こうから、聞き覚えのある悲鳴とそれを笑う声が廊下に響き渡った。
「うわああぁぁっ!?」
「あはははは!だっせー!!」
レイとハーマイオニーは、ほとんど同時に顔を上げた。その悲鳴に混じった切羽詰まった響きが、二人を反射的に立ち上がらせた。
廊下へ飛び出したレイ達が目にしたのは、杖を手に笑うスリザリン生たちと、空中に逆さ吊りにされたネビルの姿だった。ネビルのローブは重力に従って頭の方へ垂れ下がり、本人は何とか体勢を立て直そうとしている。
「ちょっと、何をしているのよ!」
「ヤバい、グレンジャーだ!」